10月2日の財政委員会で質問に立つ。
2015-10-08

今定例会には、提出議案として8件の工事請負契約案件が提案されている。
ここでは、それらに関連した工事の契約について、いくつか確認をしたい。
議案である8件の工事案件を見ると、前回定例会の議案分に引き続き、参加者が増加傾向で、これまでの不調対策などが少しずつ効果を現しているようにも見える。
都は、入札に参加しやすい環境の整備に向けて一連の改革に努めており、特に本年4月からは、入札不調に対する緊急対策として3年間の期間、WTO対象以外のすべての工事に、最低制限価格制度を適用する臨時的措置を開始した。
現在、制度の施行開始から約半年が経過し、全体の傾向も少しずつ明らかになってきていると思う。
Q1
ここではまず、都の発注工事において、今回の臨時的措置をはじめとした制度改革適用後の入札状況について伺う。
- A1(契約調整担当部長答弁)
- 最低制限価格制度の適用範囲の拡大をはじめ、市場価格と予定価格とのギャップの解消、JV基準の見直し、全体スライド条項の改正など、主要な取組を本格的に適
用してから、約半年が経過した。
この間の入札契約の概況について、まず、入札時の不調発生率については、本年8月末時点の全業種平均では8.2%であり、前年同時期の11.3%と比べ低下している。
また、議会付議案件における入札参加者数については、3者以上参加のあった案件
が、昨年の26年第二回、第三回定例会では計15件中、1件もなかったものが、27年第二回、第三回定例会においては、それぞれ10件中4件、8件中5件に増加している。
さらに、中小規模を含めた工事全般においても、たとえば予定価格約2億2千万円
の空調工事において、入札参加者が昨年の1者から本年は7者に増加する案件が見
られるなど、効果が確認できることから、引き続きこれまで進めてきた制度改革、運用改善を確実に定着させることが重要と考えている。
- (柴崎幹男)
-
不調発生率、入札参加者数ともに改善しているのは良い傾向だ。
しかし、不調は年度後半に増加する傾向があることから、これからも制度改革の効果が現れるよう、さらに全庁への定着に努めるべきだと考える。
また、一方で、今後積極的に解決を図っていくべき課題もある。
それは、公共工事を担う従事者の実態として、仕事が忙しく休日が取れない、雇用が不安定で将来への展望が持てないなど、腰を据えて働く環境が必ずしも十分でないことである。
特に、下請事業者となる中小企業や、建築工事の進捗に合わせて施工する設備事業者などは、全体工程のしわ寄せを受けることが多く、休日を使っての工事が常態化しており、ワークライフバランスの観点からも問題が多い。
Q2
そこで、公共インフラを支える建設現場の労働環境改善について、発注者である都はどのような認識をもっているか、所見を伺う。
- A2(契約調整担当部長答弁)
- 都は、入札監視委員会の下で、事業者団体と定期的な意見交換を実施し、市場の動向や現場実態の把握に努めている。
この意見交換の場において、事業者からは、事務作業の煩雑さ、余裕のない工期設定などが、労働環境が改善されない要因として指摘されており、特に下請事業者等においては、人材確保の観点から、都発注工事における週休二日制の実施への強い要望があった。
賃金はもとより休日の確保などの環境改善が、特に中小企業者にとって、人材確保の大きな要因となっていることを再認識させられた。
都は、発注者として、持続的なインフラ整備を着実に進めるため、公共工事の担い手を中長期的に確保する責務があり、そのために現場技術者の労働環境改善への取組は、不可欠なものと考える。
- (柴崎幹男)
- 労働環境の改善は、受発注者双方が重点的に取り組むべき課題であるが、これに関連し、都は、現場の実態を把握するため、昨年度から社会保険労務士による特別調査を行っている。
また、本年第一回定例会の財政委員会では、わが党の木村委員の質問に対し、都は今後調査の充実を図ると回答している。
Q3
社会保険労務士による特別調査について、本年度どのような取組を進めていくのか伺う。
- A3(契約調整担当部長答弁)
-
今年度の特別調査を実施するに当たっては、今後の方向性を見据えつつ、昨年度実施した調査の課題を踏まえた内容を盛りこんでいくことを基本とした。
具体的には、まず、調査対象業種について、昨年度は土木工事のみを選定したが、より幅広く都発注工事の実態を把握するため、本年度は土木工事のほか、電気設備工事、空調設備工事の3業種とし、対象事業者の数も9者から16者に拡大することとした。
また、昨年度は、1件の工事について、元請、一次下請、二次下請各1者ずつの調査としたが、下請事業者の調査をより重視し、1件の工事内で下請同士の比較ができるよう、今年度は、土木工事は1者の元請に対して、一次下請、二次下請で合計4者の事業者を調査することとした。
さらに、昨年度、勤務実態の確認が書類審査だけでは判断できない事例があったため、今年度は現場の担当者に直接ヒアリングし、記録を確認するなど、より詳細に労働条件、労働環境の実態について調査することとした。
- (柴崎幹男)
-
本年度の調査については理解したが、公共工事の担い手を確保するため、来年度以降も同様の調査を継続することが重要である。
そして、そのためにも、特別調査のありかたについて、さらに幅広く実施できるよう整理する必要があると考える。
Q4
そこで、社会保険労務士による特別調査の今後の取扱いについて、都の考え方を伺う。
- A4(契約調整担当部長答弁)
-
昨年度と今年度、特別調査は、低入札価格調査を実施した工事を対象として、主に法令遵守の観点から実施している。
しかし、今後は、低入札価格調査の対象工事が減少する半面、改正品確法が本格的に施行され、受発注者ともに担い手の育成・確保に向けた取組を促進する必要がある。
このため、今後の調査対象工事については、平成28年1月1日以降に公表する財務局発注工事全てに拡大した上で選定していく。
その上で、今後の調査の具体的な内容は、事業者団体との意見交換などから明らかになる労働条件労働環境の課題全般とすることとし、その時々の現場の実態について関連する事業者団体と課題を共有し、調査内容に反映させていくこととする。
- (柴崎幹男)
-
入札参加者が増えている状況が一時的なものであってはならず、発注者は、将来的にも社会インフラを維持・整備する担い手を、確実に育成し、確保していく責務があると考える。
実際、現実の建設工事の現場では、労働環境の未整備が原因となり、新たに就業する人材が少なく、技術者の高齢化が進んでいる。
都が社会保険労務士を活用した特別調査を継続していくことからも分かるように、現場の労働環境の改善は喫緊の課題である。
したがって、これらワークライフバランスをより推進する取組として、社会的にも影響力の大きい都の発注工事で、「女性や若者の積極的な登用」や「週休二日制の導入」などのモデルとなる事業を行うべきである。
Q5
最後に、公共工事の将来を担う人材を確保するための取組について、都の考え方を伺い質問を終わる。
- A5(契約調整担当部長答弁)
-
都は、2020年オリンピック・パラリンピック大会の開催都市として、競技施設などを整備していかなければならない。また、大会後も首都の公共インフラを継続的に整備・維持する責務がある。
そのためには、将来の公共工事を担う人材の確保・育成・定着に向けて、発注者としても積極的な取組を進めていかなければならないと考える。
事業者団体との意見交換の場では、入札監視委員から、「女性の現場進出を支援する取組の検討」や「東京都がモデルを示すことの重要性」について意見を頂いている。
これらのことを踏まえ、若者や女性の就業、それにつながる社会保険の加入促進、週休二日制の実施などの環境整備を進めるため、今後モデル事業の実施を含め効果的な取組を検討していく。